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ギョレメ野外博物館

ギョレメの教会 | ギョレメ野外博物館 | 修道士、修道女の僧院

ドゥルムシュ・カディル教会(Durmuskadir Church)

この教会が発見されたブドウ畑の所有者の名を冠するドゥルムシュ・カディル教会は、ギョレメのカルシュブチャックにあり、ギョレメだけでなくカッパドキアの教会でも非常に少ない11.6×9.6ｍの寸法で作られたバシリカ様式の教会であり、3つのアプス（教会奥の丸屋根の掘り出し部分）と“テンプロン”（聖障：拝廊の中央部を至聖所と区別して聖所といい、至聖所と聖所の間を仕切るもの）あるメインアプスで構成されている。

テンプロンのあるメインアプスは初期ビザンツ期では主流な建築様式であった。（テンプロンにある窓のような隙間はカーテンによって閉じられ、内部の宗教儀式の様子が見えない様になっていた。11世紀以降のテンプロンではカーテンの代わりにイコン画が使われていた。）このテンプロンをもつアプスには岩壁を半円形に掘って作った“シンラノン”があり、儀式の際にはここに司教や修道士などが座った。そのために、この場所は床よりも一段高く段差がつけられている。

メインアプスの隣にある小さいアプスには儀式で使用される道具を置くための壁柱や、“ニッチ”（収納用の壁のくぼみ）があり、更にメインアプスの前には一つの大きな岩を掘って作られた説教台がある。説教台には4段の段差つけてあり、説教者を高い位置で見られるようになっている。

3つの拝廊のうち、中央の拝廊はゆりかごのような形をしたアーチ形天井であり、両脇の拝廊は平天井になっているが、一部のアーチは崩れ落ちている。それぞれの拝廊は壁に彫られた円柱形のレリーフよって空間を4分割される形になっている。また、教会の入口の壁に掘られた墓は教会の司教や寄進者達のものである。

18～19世紀にハト小屋として使われていたドゥルムシュ・カディル教会は、6～7世紀の初期ビザンツ期のものと時代づけられている。

ユスフ・コチ教会(Yusuf Koc Church)

この教会もまた、ドゥルムシュ・カディル教会のように、発見されたブドウ畑の所有者からの名から来たものである。ギョレメのカルシュブチャックにあるこの教会は、2つのアプス（うち1つは崩れている）、交差アーチ形天井、十字架形設計、2つのドーム、そして4本の円柱で構成されている。しかし円柱は現在すべて崩れ落ちている。

アプスには懐にキリストを抱く聖母マリアの壁画があり、その下には整然と並んだ司教達が見られる。聖徒達のあいだに見られる結び目のような“こぶ”のある円柱は11世紀以降よく見られる特徴の一つである。（現在、これと似た同じものがイスタンブールのモッラ・ゼイレッキモスクの説教壇で見ることができるのだが、これは建築材料を間に合わせるために別の場所から運ばれてきたものである。）

アプスの前方部に“ステファノス”という名で描かれている聖徒は、宗教儀式を司る聖職者を補佐する聖徒であり、その首にしっかりと巻かれた黄色いスカーフからそのことが判る。襟元に2つの十字架のある司教達は片手に聖書を、もう片方の手で祝福を捧げている。教会のドーム部分には天使ガブリエルとミカエルの壁画がある。

ペンダント形の円の中には、6本の翼をもつ天使（セラフィン）が描かれている。（セラフィン：神と人間とのあいだを行き来する神に最も近く、また最も神に速くたどり着ける者）

南東部の壁面には聖戦士“テオドルス”のフレスコ画や、その隣にはこの教会の寄進者でもあるテオドルスがその名と共にかなり小さく描かれており、そこには“神のしもべテオドルスの祈り”という銘文がある。この教会のほとんどの壁画は、こうした聖戦士達についてのものである。

一時期ハト小屋として使われていたユスフ・コチ教会は11世紀中頃のものと時代づけられている。

場面：受胎告知、コンスタンチンとヘレナ、ゲオリオスとテオドルス、3人のユダヤ教徒の釜戸での火刑、聖戦士のフレスコ画

サクル教会(Sakli Church)

この教会は、近年1957年に発見されたため“サクル（隠された）教会”と名付けられた。この教会はエル・ナザール教会の近くにある。長方形型設計で中央部に2本の円柱、3つのアーチで2分され、3つのアプスがある。平天井は十字架と幾何学模様で飾られており、教会を飾る絵は漆喰の表面にではなく直接岩表面に描かれている。教会の周辺で見つかった塗料のついた布の切れ端から分析すると、教会の絵付けには筆の代わりにこのような布の切れ端を使っていたと思われる。サクル教会の建築はメソポタミア教会の建築様式と似ており、11世紀後期ものである。

場面：ディーシス、受胎告知、誕生、イエスの寺院参詣、洗礼者ヨハネの宣教、洗礼、イエスの変容、十字架のイエス、聖母マリア永眠、聖徒達。

エル・ナザール教会(El Nazar Church)

ギョレメ博物館への道の途中、右側の渓谷における道から約800ｍの所にこの教会の名を冠したエル・ナザール渓谷がある。妖精の煙突の中に掘られたエル・ナザール教会は、Ｔ字形設計、十字架形アーチ天井で、東側には墓がある。メイン・アプスは十字の肢の部分が中心部でで一体化するような形で開かれている。

壁画の場面は年代記のように順を追って描かれている。2人の画家によってアルカイック様式で彩色されたこの教会は、キリストの幼年期、青年期及びその奇蹟の数々が描かれており、教会は10世紀のものと時代づけられている。

場面：受胎告知、訪問、誕生、三賢者の参詣、エジプトへの逃亡、イエスの寺院参詣、エリザベスの追跡、洗礼、ラザロの復活、イエスの変容、エルサレム入城、十字架のイエス、イエスの地獄征服、イエスの昇天、メダル形の円の中に聖徒達の肖像画。

聖マリア（クルチュラル・クシュルック）教会(Virgin Mary Church)

トカル教会の後方、ギョレメ野外博物館から約250ｍの所で、クルチュラル教会の南側斜面に位置している。教会は長方形型設計、広さと高さがそれぞれ違う2つのアーチ形天井に覆われている。教会は11世紀前期のものであり壁画には聖徒と聖書における4場面が描かれている。

場面：ディーシス、ベツレヘムへの旅、誕生、十字架のイエス、聖母マリア永眠、聖徒達。

クルチュラル教会(Kiliclar Church)

ギョレメ野外博物館からに約600ｍの北東のクルチュラル渓谷に位置するこの教会は、十字架形設計、4本の円柱、中央ドーム、十字型アーチ天井、西側の端部分は平天井、東側はドームから成り立つ3つのアプスがある。

教会の内部には非常に豊かなフレスコ画が描かれており、それらは長い聖書の物語を描いたものである。クルチュラル教会は9世紀末から10世紀初期のものと時代づけられている。